恐怖は躾の特効薬、叱ることは大きな愛

恐怖は躾の特効薬、叱ることは大きな愛  
柔實会会長 二宮秀生    〈株式会社タカラレーベン西日本 代表取締役会長〉 

 孫子の兵法の最初の部分に書いてある物語です。『この兵法書を理解すればどんな組織も最強の軍隊になりますよ。』と孫子は王様に言った。王様は孫子に『ならばココの大奥の女中たちを兵士にすることが出来るのか。』と尋ねた。『私の指導に任せて貰えれば可能です。では御覧に入れましょう。』女中の中からリーダーを決め50人の女中になぎなたを持たせて訓練を始めた。
 稽古の合図は太鼓だった。稽古始めの太鼓を叩いても、50人の女中はニコニコ無駄話をして稽古の足並みがそろわない。孫子は言った。『私の説明が聞き取れなかったのかもしれない。』と言ってもう一度説明をした。稽古始めの太鼓を叩いた。同じように女中たちはニコニコ無駄話をして稽古の足並みがそろわない。『二度説明した。もう、私に落ち度はない。従わない者に責任を取って貰う。』と言って、いきなりリーダーの首を刎ねた。転がるリーダーの頭を見て50人の女中に恐怖が走った。恐怖は躾(しつけ)の特効薬となる。それは、一糸乱れぬ女部隊が誕生した瞬間だった。

 就職にあたり体育会系の運動部員が重宝がられるのは恐い監督や先輩による厳しい秩序を体験していることにある。スポーツの試合は戦(いくさ)と同じ戦場である。強いチームを作ることは孫子の兵法と同じである。挨拶礼儀から始まり約束事の徹底、強い闘争心、粘りの戦闘心、厳しい躾教育が出来ていることにある。勝負に対する心構えも試合の敗因となる。結束力の欠如が試合の敗因となる。病気や怪我も試合の敗因となる。病気や怪我などの体調も勝敗を左右する。体調不良は自己管理の欠如として叱られる。練習に遅刻をしたりサボったり無断休暇などもってのほかである。強いチームを創ると言う責任は学生の生活指導〈私生活〉にも及ぶ。躾教育の欠如が昨今の社会現象である。人間として最低限の躾教育の体得が体育会系部員の特徴である。

 上司・先輩の役目として、部下の問題行動に対して黙認し、叱らないことは無関心・無責任で、利己主義だと思う。『あの人の怒った姿を見たことない。』などと言われる上司はチームを纏める資格が無い無能の上司に等しい。人は叱られて(怒られて)育つ。上司が必死であれば本気で叱る筈だ。真剣であれば烈火のごとく叱る筈だ。叱られる恐怖が躾の特効薬となるのです。弱い心を正す為には恐い人の存在が不可欠である。チームに長幼の序は不可欠です。2年生と1年生(初年兵)と、この1年の差は絶対服従、天地の差がある。怖い上司(先輩)だからこそ褒められたら嬉しいのです。リーダーと呼ばれる指導者は怖くて優しい存在であることが不可欠です。

 ボス猿はグループの中で一番強くて怖い存在でなければならないのです。ボス猿の側近は次のボスの座を狙う副ボスが固めている。猿の世界にも序列がある。ボス猿が居なければ、群れの猿たちがが勝手に振舞い、組織は崩壊します。強い恐いボス猿がいて初めて秩序(躾け)が出来るのです。猿の世界でも恐怖は躾の特効薬である。ボス猿の本気の怒り(威嚇)は群れを守る為の大きな愛なのです。仲間を心配するから威嚇するのです。役職の序列は人間だって同じです。組織を大事に思うから叱るのです。部下を大事に思うから叱るのです。部下の成長を願うから叱るのです。組織や部下のことを真剣に考えていない上司は叱りません。私の嫌いな評論家程度の上司である。自分の成長を真剣に思ってくれているかどうか部下は感じています。と、言うことは叱れない上司は上司失格・無能な上司と言える。