後輩に贈る言葉、終着駅は始発駅     

今年もまた松山大学柔道部員の追い出しコンパの時期がやって来た。昨夜東京第一ホテルで追い出しコンパがあった。彼らにはお疲れさまと言いたい。いつの時代も4年生最後の試合が一生のレッテル(確定した評価)になっている。卒業して何十年たっても、あの時のあの試合がどうだったと、自慢をしたり反省したり生々しいやり取りが死ぬまで繰り返される。今年の卒業生は歴史的敗北を喫した年代である。結果は結果として事実は事実としてどうすることもできない。アノ口惜しさを元に、なぜ負けたのか考え続ける人生となる。時間がたてば冷静に分析することも出来るようになる。何が原因だったのか、そのうち柔道から学んだものは何だったのかと思いは変わって行く。

私たちの学生時代、亡き八木隣一監督が言われた言葉を思い出す。勝利した時は勝利に酔い有頂天になる。勝った時は自信過信となり大言壮語となり傲慢になる。無知の壁によって成長が止まる。そんな時、八木先生は『敵は強くなって戻ってくるぞ。勝って兜の緒を締めよ。』と油断する心を戒められていました。

敗北を喫した時は意気消沈して悲観的になり塞ぎがちになった部員たちに『勝った試合より負けた試合のほうが得るものが大きい。どう立ち直るかが問題だ。』と励まして戴いた。借りは返す、仇討ちの心を忘れない限り決着は付いていないのです。ギブアップしない限り優勝途上なのです。敗北が後輩たちの闘争心に炎をつけるからです。何年経とうが何十年たとうが何が何でも優勝旗を松山大学が取り返す。イスラエルは2000年前ローマ軍に滅ぼされ、追放されたユダヤ人は20世紀になって念願の国家を取り戻しました。ユダヤ人の国家再建の魂と同じです。

人生は柔道の試合と同じです。人生は晴れたり曇ったり、勝ったり負けたりです。三歩前進・二歩後退、右往左往しながら前に進んでいます。人生は禍福終始、人生は禍福がおりなす縄のごとしである。順風満帆で勝ち続けることなどできません。勝って奢らず、負けて腐らずである。最後に笑うのはだれか。死ぬまでギブアップしなかったものが人生の勝者となります。必ず成功して見せるという鉄の決意、創意工夫と研究熱心、辛抱強さが不可欠です。卒業式は一つの区切りであって終わりではありません。卒業式は出陣式です。柔道人生の終着駅は人生勝負の始発駅なのです。

そこで卒業する皆さんに人生成功の簡単な秘訣を5つを言います。①声が大きいこと。声が大きいことは正しいと思う自分の意見が正々堂々と話せるということです。②飯が早いこと。なんでも人より一歩先を行けということ。健康でなければ早飯はできません。③酒が飲めること。人間関係が大事ということ。人との協調が不可欠であることを意味します。この3つは柔道部で身についた基礎があります。彼らにとって3つの基礎はもうすでに身についています。

問題はこれから言う④と⑤の2つです。柔道部員が一番やっていないこと。それは④勉強すること。向学心と向上心です。職場の勉強は当然として誰でもやります。職場の勉強を超えて一般教養を身に着けることです。新聞を読んでください。政治と経済が分かれば社会人として馬鹿を隠します。しかも⑤継続することです。その勉強は毎日辛抱強く続けることです。継続は力なり。毎日コツコツと続けることです。きっと出来る奴と白羽の矢が立ちます。人生勝負は柔道の練習と同じです。柔道が強くなっていく過程と同じです。これからが本番の試合と思っていただきたい。希望をもって頑張って戴きたい。  
柔實会会長 二宮秀生